■ 虚考、うぃる。【Mixed Media Arts Production CATTER'Z EYE & Harasawa Gukken weblog】 ■

物売るってレベルじゃなくねぇぞ              【液晶ペンタブレットCintiq 22HD購入レビュー】

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某大手家電屋のネット販売事業部で働いていた。

現場には、大型液晶テレビやルンバ、サラウンドシステム、世間的には高価な商品がみっちり保管されていて、なかなか壮観で、ガジェット好きがやる仕事としてはわりかし楽しいものだった。

んだが、次第に「ある疑わしさ」が膨らんでゆくのだよね、そこに長くいるとさ。

 

「これ、本当に効果あんのか?」とか「前のと大して変わんねーのに高くして売るのか・・・」というような。

 

要するに、製品に対して「本当にコストパフォーマンスは見合っているのかよ」ってな疑念が、働いてると嫌でも付き纏うようになる。表示されてるビックリ仰天な代引き価格とか見ちゃうとね、もう避けようがないの。

 

自分がいたところでは時節柄レイコップ(各自ggr)がよく売れていて、試しに使ったりしたものの、う~ん・・・ぶっちゃけ「新品のハンディ掃除機を布団専用に用意する」んじゃダメなんかアレ(苦笑) プラズマクラスターイオン発生器ってよ~、一体加湿器と具体的にどう違うってぇのさ。

てか、言っちゃうけどさ、それらって価格釣り上げるほど、劇的な効果、ないんでしょ?『嫌な仕事をして、要りもしないモノを買わされるわけだ!(by ファイト・クラブ)』と。

 

とまぁここまで長い前置きで、別にそういう現状打破すべしだとかの家電業界批判をしたいんでない。何が言いたいかってぇとですな、結局のところデジモノとか電化製品の多くは、既製品をすこ~しいじくってマイナーチェンジしたり名前や呼び方だけ変わって売られているものが圧倒的多数であり、それはメーカーが生き抜くための販売戦略なので道理の内ではあるのだけど、「現行の様式や価値観まで大きく変えてしまう」ガンダムの如き傑作機なんつーのは本当にごくごくわずか(あるいは限りなくゼロに等しい)だということ。ま、そりゃそうだ。

 

ところがね~液晶タブレットだよ、殊にWACOMの最新型液ペンタブであるCintiq HDシリーズは、やってくれてるんだ。今後そういう「時代のスタンダードを切り拓く」可能性を持ったデバイスなんである(と結構マジで感じる)。

 

買った手持ちの型はWacom | 液晶ペンタブレット Cintiq 22HDだ。

ひとまず、開封の儀はこんな感じでした。

 

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サイズの比較対象として少年コミックを置いてみたが、見ての通りとにかく箱からの空間圧迫力が異常なことになっている。ドドドド。

 

しかも破損対策なのか、外箱&内箱の二刀流でマトリョーシカみたいなことに。中身はポリ系の緩衝材にはめられてしっかり固定されてる。

親切設計。

 

重量はスタンド合わせて8.5kg。芸能人がDHCを使って数ヶ月で失う体重分である。重さが~重さが~と巷じゃ囁かれているが、実質上位タイプである24HDの28.6kg(こっちは身折設計)に比べるとかなり良心的。普通に持ち運べる。

 

そ~っと作業台に乗せてみた。

 

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液晶サイズは21.5インチ。黄色い紙で覆われている部分がモニター部分。紙を剥がして保護シートをぺた~。かぺ~。

 

そだ、保護シートに関する助言を付しておきますと、液晶保護シートは24インチ用のワンサイズ大きいやつを買った方が無難です。無論モニター部分から大きくはみ出るものの、黒い枠の部分には余裕で収まりますので。22インチ用でも多少遊びはあるようなんですけども、左右2cmずつほどなので結構、キワどい。手厚く手広く保護ってあげましょう。

 

それと、映りこみ軽減を着実に狙うならノングレア(アンチグレア)タイプのマットな質感のものを。目的や好みにもよりますが、クリアでつるっとした光沢タイプは反射しますので避けたほうがよいかもしれません。後に詳述しますが、22HDはたまげるほど超くっきりはっきり画質なので、マット質感で若干ボヤァ・・・感が増しても十分すぎるほど鮮明ですヨ。

 

ちなみに自分が貼った保護フィルムは↓ 何日か経ったらホコリを巻き込んだ箇所以外は本当に気泡消えた!サプラ~イズ。

 

 

つないで実際に使ってみよう。

 

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注意点。PCから映像出力させてCintiq本体に映すわけなんだけど、22HDは入力端子がDVI(オス)オンリーなんである。よってPCにHDMI端子しかない場合、下記の様な「DVI(メス)&HDMI(オス)」の変換アダプタが必須となる。

 

マイVAIOちゃんは、HDMI端子とスタンド(外せない)が近すぎてデブくてごっつい変換アダプタが入らないため、細身筋肉質なHDMI延長ケーブルをかませて使っている。

ELECOM HDMIアダプタ AD-DTH

ELECOM HDMIアダプタ AD-DTH

 

 

さて22HD、まず褒めたい点をずらずら~と。

使用感としては、ペンを動かした際カーソルの応答速度にコンマ数秒程度の微ラグはあるものの(デュアルモニターとの遅延はほとんど感じられない)、狙ったポイントをほぼ的確に描ける、雑把に例えると板タブがラジコンの遠隔操縦ならば、この液タブは乗り物の手動操縦といったところ。実際はペン接地面とカーソルがパネル越しに1cmほど離れているのだが、ダイレクトに描いている感覚充分だ。・・・Magnificent!

 

筆圧感知が抜群にいい。

つけペン等の持つ独特な書き味も、使い手の癖を保ったままほぼ再現できる。最大の目玉と言っていいでしょうな、液タブがマックス2048レベルまで拾ってくれるのは。あらゆる現行機を含めた最高レベルの感知が備わったことでがドーンと実用性がハネ上がり、未来水準が今まさに目の前にある感じ。

・・・まぁ正直体感だと先代の1024レベルと大差ないんだけどね(笑)、拡大して見てみると微細で確実な差が分かる。この差、ペン入れやレタッチをする側に立ったことある方には大きいはず。そのあたりにもういちいち神経質になることなく、アナログ描きと同感覚(しかも道具代が格段にローコスト)でデジタル量産体制に入れるのはミドルユーザー~プロにとってかなりデカい。個人規模の場合、生産スピードが生命線だからね。 

 

また22HDに関しては、スタンドに備わっている回転機能が使いやすいんだな、地味にいいもので。

各々の作業スペースや時々の用途に応じて、角度を調整しながら横に縦にと羽生結弦きゅんのスケーティングばりにフレキシブルな変化対応させることができるのだ。これ、多用するか否かはかなり個人差がありそうだが、このサイズの本体を回すのは通常難儀なので、使いこなせば作業効率がグンと増すんじゃないかな。原稿回転技法の使い手たちはおーいおーいと泣いて喜ぶに違いない、福本伸行センセとか・・・・・・!

 

 

 

ファンクションキー、パネルの左右にあるボタンね、その真裏にあるトラックパッド(いわゆる背面タッチパッド)も様々な機能が割り当てられていて、押すと画面スクロールやShift・Ctrlなど、キーボードを介することなく、スムーズに作業を加速させてくれる。それでいてゴチャゴチャせずゆったりフラットなのも心地よい。ユーザーインターフェース、よく練られてるわ~。

あえて難癖つけるなら、付属の太いタッチペン、クリックボタンがでかかったりやらしい位置にあったりして、若干使いにくいんだね。僕にその(7,000円のオプション)ペンを贖えというのか。

 

う~ん、液晶の発色はちょいと癖があって、確かに見た目黄色が強く出ている。

RGBでいうと「R(赤)が強めのG(緑)弱め≒黄色っぽい」、つまりこれと逆の色彩設定をしてやると癖が抜けた発色になるというわけ(ちなみに自分の設定はR=245 G=255 B=250 Brightness=60 Contrast=62 Backlight=25)。本体右上にメニューボタンがついていていつでも色感や明度をカスタマイズできるので、本格的に使い始める前にまずある程度自分好みの調教をビッシビシ施すと吉。

 

それでもさ~当機はAdobe RGBカバー率・公称72%と、24HDの92%、13HDの75%と比べても色域再現度が低いんだよねぇ。つーわけで、これ単体でカラーを徹底的に追究してく方向性に関しては、過度な期待を持たない方が良いかも。

最上位機の24HD TOUCHなら、Display Port接続で最大10億7374万発色とブチギレた性能ではあるが・・・いずれにせよこだわって色を見るのであれば強力なディスプレイを別に用意してデュアルモニターするのが手かなと。

 

液晶と言えば排熱、半日ほど稼働しっぱなしでも、パネルはさほど熱くならない。

ほんのりとした程度。バックライト、LEDなのが大正解ですな。家計にも優しい。嫁さんの小言も減りそうだよ。  あ、俺離婚してたから関係ないですね。てへ。熱の少なさ≒寿命の長さだからこの設計は嬉しさ満点、ロングランが期待できる。ただし、バックライトの出力上げる設定にするとこれより若干熱くなるのかもしれない。冬場は丁度いい。夏場はやはり冷却を念頭に置いておこう。

 

さっとこんなん描いたよ。

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さて、大きな懸念もある。

 

そもそもマウス描きや板タブ描きは、アナログ描きとはある種の別スキルだとして、あの離れから描く感覚に完全に慣れてしまっていると、液晶ペンタブが肌に合わない可能性もあるんだよな。なぜなら、構築した描き方そのものを変えなきゃいけない上に、液晶パネルに前傾姿勢で密着しながら描かにゃならんゆえ若干疲れやすい、目も体も。結構同意見をネット上で拝見した。

 

で、先述した超くっきり画質についても触れておく。自分はさほど気にならないのだが、いわゆる「ギラつき」が強めに出ているのは確かなんである。『いつかギラギラする日』なんて来るまでもなくギラついている。うおっまぶしっ

 

これは液晶のドットピッチが0.247と精細なこと、また22HDのコントラスト比(最白と最黒の明るさ比率)が1000:1とかなり高いことにより、メリハリのあるシャープな画質&明度差がはっきりと出ることで視覚へとはたらく刺激がおそらく強いためだ。よく言えば「鮮明、字とかは読みやすい」、悪く言えば「硬質でザラザラした、中間色の弱い画質」。目が疲れやすい人には(本当に)泣ける仕様となっている。

 

これら諸問題もあるが、この製品に関してはひとまず実機を試しに使ってみてから購入することを薦める。展示機設置店舗に行くのである。自分は当初ワンサイズ下の13HDを狙っていたものの、展示機をいじってみて「22HDのほうが俺には合ってるなぁ」と思い直したのである。結果、大正解だったもの。

また当シリーズは、2014年3月現在、ヤフオクにおいてネット通販最安値の8~9割前後で高値取引されてんだよね。買って諸々の理由で使わなければ、早いうちにオークションで売り飛ばしてしまえばいい。出品者も落札者もニッコリ、ってね。

 

 

Cintiqシリーズ、現状そう安くはない(22HDは最安値相場15万前後!)。安くはないが、とにかくハイデフなイラストを山ほど描きたくて描きたくてしょーがない人や、デジタルなクリエイティブ・ワークを営む者にとってはこの価格すらゆうに跳び越える、非常に優れた「コストパフォーマンス」を発揮し得る製品である。はっきり言って物買うよ買うってレベル。これからヤってやるぜっていう電脳クリエイターの卵にこそオススメしたい逸品だ。ツボにはまればさらに楽しくなること、ウケ合い。捗るよ。

 

そしてこれは、これからある程度旧式化しても長年実用に耐えられそうなくらいの「先取り」なんではないかな、とも。

 

最新モデル以降、このクオリティを保ったままさらなる最適化・廉価化・量産化が成されれば、もうすぐとはいかないだろうが数年後、やもすれば板タブを超える次代のクリエイターズツールとして普及し、スタンダード化していくような可能性を、今バリバリと感じている。一社寡占に等しい市場、競合の影なき行く末に若干の不安もあれど・・・ワコムさん頼むよ。

 

 

アナログ描きならではの手間暇、紙の手触りやインクの匂い、風情を失っていくことに、一抹の寂しさはある。

 

それでも、時代は変わってゆくのですなぁ。

 

 

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