■ 虚考、うぃる。【Mixed Media Arts Production CATTER'Z EYE & Harasawa Gukken weblog】 ■

コンシューマーゲームは儲からない10-2

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以前のエントリ、『コンシューマーゲームは儲からない』の続き。
前回に目を通していただけると理解がより深まること、お約束します。


え〜と、ざざっとまとめると新品ゲームという商材は粗利がかなり低い、基本的に初動性が高く返品システムもないから在庫余りのリスクは店舗が丸抱えすることになる、というところまで書いた。

したっけ薄利多売じゃ!売れるソフトだけをガンガン仕入れればいいんじゃ!ってなるよね。ところがだ、問題は「何が何本売れるか正確に予知できるんですか?」ってことなんだ。ある程度当たりをつけることは出来る。

いくつかある方法として、1つはシリーズものなら前作にあたる作品の稼働実績を調べること(発売機種が変わるとあまり意味をなさないが)、1つは全国の発注状況を知ること、もう1つは事前予約の件数で推し量ること。まぁ、販売店なんて元々薄利の新品ゲームでバカスカ利益を得ようなんて考えてないから、ノウハウと数年分の稼働実績のデータさえあれば、大体はこれで無難な発注が出来るというか、どうにかなってしまう。

それでも新規タイトルの売れ行きだけは予測するのが難しい。本当に難しい。格闘技で例えるなら、所属ジム(≒メーカー)とバックボーン(≒制作環境、開発規模など)とオッズ(≒前評判)だけ教えてやるから、初出場の選手が何ラウンド目でどんな勝ち方負け方をするのか当ててみろ、ってなもんである。

そこに関しては的中するはずがないからビタリ的中させなくてもいい悩むだけ時間の無駄という考え方もあって、要は欠品したら他からあの手この手の手段を講じて調達してくればいいという人もいる。今の不況じゃ少数派だと思うけど、情報を鑑みた上で「こりゃ絶対売れるだろぉ!」って場合はあえてリスクを取って独り勝ちを狙うなんて勝負師気質もいたりする。

今にして思えば発売前のデモンズソウル、あれは金の匂いがそりゃもうプンプンしてたわけだけど、みんな賢明さを選んで勝負しにいかなかった結果、「売ってくれぇ…!親が出す…!」ってなあの狂気のような難民騒動が1ヶ月近くにも渡って勃発したわけだね。乱費しません無駄出しませんというのはビジネスの見解としては至極正しい、けどその後のソウルシリーズの爆発を見ると、やはりそれでは文化の誕生と醸成は停滞してしまうよというある種の好例。バランスが大事ってのは当たり前のことだけど、飯を食うためだけに生きていたら、人は人でなくなってしまう。

おおっと、あともう一点、仕入れに関する大きな判断材料があるんだった。ファンは皆喉から手が出るほど欲しいであろう、ゲームを買った時に付いてくる特典のことである。この特典、実は入荷数全てに付属するわけではないんである。

どうやって数が決まるかというと、イニシャル発注と言って、発売の2〜3ヶ月前に初回入荷数の事前発注をしなければいけないんだけど、『特典はイニシャル発注数の○○%配分』とあらかじめメーカー側によって設定されている。いわゆる商売上の駆け引きってやつ。メーカーだって1本でも多く問屋小売に売りたいわけだ。特にコアユーザーが強いショップではこの要素は集客要素の生命線にも等しいかもしれない。となれば、ターゲットとする客層によって仕入れ判断は大きく変わってくるはずで。

そういえば、ちょっと前に某有名ショップがその仕組みを重々承知の上でアトラスさんの初回特典の割合云々って苦言をブログで言ったことがちょっと話題になった気がするけど、あんなの今更ニュースで話題になること自体が馬鹿らしくて、この手の特典の配分ってのはゲーム業界内では常識中の常識、ずっと商習慣だったことであって今更騒ぎ立てることでもなかったのだ。

まぁ知らなかった子供がショックを感じたんだろうけど、この程度の政治やバーターなんてゲーム業界に限った話ではないもんな。「ひどいメーカーだ、入荷数分特典つけろ!」なんて正義漢じみたコメントも結構目にした。そうなりゃ販売店は嬉しいだろうけどさ(とは言え物量が馬鹿みたいに増えて管理しきれなくなるというデメリットもあるが)、今はどのメーカーも苦しい、特典はあくまで特典、そこに金かけるような上積みをするわけがなくて、その分の費用諸々を開発や宣伝に回すのが本道でしょうと思うのであるが、いかがか。

あとね、説明が難しいのだけど、仕入れを可能な限り失敗しないコツとして、どれだけお客様へのアンテナを高く広く張って見聞きしているかっていうところも重要。言わば顧客側の視点に立つこと。おいおいなに言ってんだ当たり前だろってことなんだけど、客層だとか問い合わせの件数だとかってのはかちっと具体性のあるデータを得にくい点なだけに実は見落としやすい。

そういった要素って「事情通」のゲーマー店員ほど見落としがちで、逆に性能やらメーカーの姿勢云々、需要以外の飛沫に振り回されやすかったりするんだ。いわゆるゲハ的な観点というのは、小売りにおいては上の立場の人間ほどほぼ無頓着で(売れるなら任天堂だろうがソニーだろうがMSだろうがどこでもいいという人が多い)、下の立場に行くほど執着しやすい傾向があったように思う。しかし、現場ではゲハでの常識や見解などほとんど通用しなかったことを一応付記しておく。世の中は他人だらけ、マニアの他にファンシーとヤンキーが大多数存在するのだ。

そんなこんなで博打性はある、でもビジネスである以上博打であってはならない。社で最も金を使うであろう仕入れ、その判断を下す際の重圧は個人差あるだろうがかなりのもんで、ドでかい量販店系企業のバイヤーがコロコロ入れ代わりやすい理由がこれ。ぶっ潰れちゃうんだよね、精神的に。

裏を返せばそれだけ売れ残りが怖いということでもあるんだな。

どれだけ時間をかけて熟慮を重ねたところで売れ残りってのは出てしまうし。だからリアル店舗って、B級C級タイトルは売り切り終了か入荷すらしないってとこが圧倒的に多い。基本バイヤーって人種は欠品の二文字を何よりも恐れるもんだが、自身の経験上、売れ筋や問い合わせがあったもの以外の欠品補充はそこまで考慮に入れない。入れるにしても悩むのよ、死に在庫のリスク背負って欠品を防ぐか、すぱっと切り捨てるかの判断って。だったらもっと他の儲かることを考えたほうが合理的なのも確かで。

まぁ、ある意味では自分で在庫の生き死に決められるだけマシかもしれないってことでもあって。こちらが一切数を決められない仕入れってのも存在するからだ。

「出荷配分」という小売りが怖れるシステムがあるんだ。要は国民的な超人気タイトルってのは受注数がとんでもないことになるので、ややもすれば作りすぎて価格大暴落とか大火傷をする可能性があるから、国内全店の希望本数なんか逐一聞いてられませんよ〜だってことで、初回生産数を絞りつつどこにどれだけ投下するかメーカーと流通が決めてしまえる。で、これが今までの仕入実績とかお付き合いとか、「あれを多く仕入れてくれやしたら、これも多くつけちゃいますぜ旦那」みたいな政治的駆け引きによって決められてしまうわけ。

主にゲーム機本体、量産に時間がかかるニンテンドーDS系のマリオもろもろ、スクウェアエニックスさんのドラゴンクエストカプコンさんのモンスターハンター、あとは異常に豪華な同梱物が付属する限定版などがそうなりやすいんだけど。ドラクエ、モンハン売れるに決まってんじゃん?でもこの入荷本数じゃ欠品確定じゃん?残念、それは業界流通の仕様だちゃんちゃん、と。基本構造が圧倒的にメーカー主導で、売れる弾の仕入コントロールすらままならないじゃんよという側面は確実にある。

実話。ある企業の偏屈なバイヤーがこの出荷配分割合に意義を唱えるべく、京都の某所まで乗り込んだ。乗り込んだ先で担当者に開口一番、こう言われたそうである、

「こんなことをするのは全世界でもあなたしかいませんよ」。

立派な根性だと言いたかったようだ。しかし嘲笑っているようにしか映らなかったという。

この一件を機に、このバイヤーは「ゲーム業界における全販売店はメーカーの奴隷にしか過ぎない」とまで言い切った。

後日、人事異動が出された。

「ポケット怪物を戦わせるゲームの生みの親は全てを奪われて社会的に抹殺された」「あいつら燃やしてやるぞひひひ」と全社内にメールするほど気が狂ってしまったのである。

ここまで暗黒面を掘り下げると、「仕入を安く出来ないもんなの?」「どうやって儲けるんだ?」「業界の構造改革とか進められないの?」って誰だって思うよね。


そろそろ核心部分に触れるんだけど、もうちっとだけ続くんじゃ。

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