■ 虚考、うぃる。【Mixed Media Arts Production CATTER'Z EYE & Harasawa Gukken weblog】 ■

コンシューマーゲームは儲からない

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ゲーム業界、一見すると華美絢爛な世界ではあるんだな。

世界的モンスタータイトルの頻出、プラットフォーム戦争、急速に台頭が進むソーシャル勢、…などなど、華やかなニュースは枚挙に暇がない。

しかし世間を見渡せばあら不思議、国内市場規模は2011年時点で4年連続の減少、ゲーム専門店ってここ20年ほどでほぼ跡形もなく姿を消し、文字通りの焼け野原になってしまったわけだ。かつてファミリーコンピューター黄金期〜ディスクメディア萌芽期には、商店街(今や死語に近いわけだが)にゲーム屋が立ち並び、果てはホームセンターの売場でも8bitのBGMが高らかに鳴り響くのを耳にすることが出来たのに、ね。

「ストアの総合化が進んでいる」、確かにそれもそうなんだ。今やゲーム取扱い店舗にはレンタルCD/DVD・トレカ・玩具・家電のいずれかが売り場に併設され、ゲームはどちらかと言えば添え物ですよといったこのうら悲しき冬景色。じゃあどうしてこうなった、なぜ専門店ではいられなくなってしまったの?ということなんだが、単純な話、当エントリーのタイトル通りだからだ。

長い話だよ。でも、人によってはためになるかもしれない話。面白く読ませるように筆力駆使します。

以前、別のエントリーでさらっと触れたこともあるんだけれど、自分は10年ほどいわゆるホーム・エンターテインメントとか、総合エンターテインメントと呼ばれる業界に身を置いていたことがあって。メディアレンタルとか、書籍・CD販売とか、まぁそんなところである。商人だったわけだ。

今振り返ると、学生時代には商人という生業に就くことを猛烈に毛嫌いしていたはずなんだよなぁ。でも、人生っちゅうのはどう転ぶか分からないもの、「人は時として、自分が憎んだものになる」という佐木飛朗斗的名言(笑)を地で行く感じで、食っていくためだったりその当時の「幸せ」を続けていくためにバランスとって選んだ道だったんだろう。まぁ、書籍・音楽・映画・ゲームといったコンテンツはどれもそれなりに広く浅く好きだったこともあって、正直自分の特性と噛み合わない業種ではあるが賑やかしく働く楽しさはあった。

閑話休題。入社したその企業は、当時ゲームの買取販売・ラインロビングにもそこそこ力を入れていて、業態の主力部門の一つであった。自分がゲームにそこそこ詳しかったこともあり、この部門に携わり店舗バイヤーを担当することもしばしばで、総計すると計5年近くはバイヤーをやったはずである。

結局、今はどうなったかというと、少し前に商い業とは一線を引くことを決め、社から退いた。でね、自分、業界に関する内情はこれまで一切表に出したことはないんだ、このブログ以外の場でも。実は、2chとかでリークされたりするインサイドな情報(発売日とか開発タイトルとかね)って、小売の店員程度のポジションでも商談会やら営業さんとの話やらメーカー通達やらで、人より先に手に入れてしまうことが出来るんだな。ただねぇ、どの分野においてもプロというのはプロだからこそ絶対に言ってはいけないことがたくさんあって、所属当時は少なからず叩かれる可能性があることを考慮してそこは自重してきたんだけれども、しかし今や路傍の一傍観者、第三者の立場から今回はその当時の経験を基に、書く。

※ちなみに業界の話とは言っても、小売側からの視点であってクリエイター側の内情に関してはぶっちゃけ分からないのでノータッチ。念のため。

まずこれからの話をより分かりやすくするため、ざっくりとした経営の基本に触れておく。今更何をという部分なんだけど、企業というのは金銭を稼ぐ場。営業を継続し金の卵を産み続けていくためには利益を出すことが必要で、その大前提としてある一定以上の「売上高」がなくてはならない。これを上げるためには、「客数=レジで買い物をしてくれるお客様の数」を増やすか、あるいは「客単価=お客様1人当たりの平均支払金額」を上げるかのどちらかが必須となる。そのために何をやりますかってぇんで定期セールをやったり、チラシをうったり、期間限定のキャンペーンを張ったりするわけだ。

ただここに1つ、実に実に見落としやすい落とし穴が存在する。「売上高≒利益ではない」という点である。なぜなら商品を仕入れた際にお金がかかったはずであり、その仕入額を「売上原価(ここは業種によってかなり捉え方が変わる)」と呼ぶ。つまり「売上高」から「売上原価」を差し引いて出た数字こそが、商品を売ることで得られる大雑把な利益、いわゆる「粗利益」となる。

極端な例を出すと、1万円の商品を売ったとしてもその原価が1万円ならば、粗利益は0円。いくら馬車馬のように頑張って売上を伸ばそうが、売った商品の原価が高ければ儲けも少ないということなので、原価を低く低くしていくことが儲けを増やす道の一つ。そのため、売上に対して粗利益の占める割合「粗利率」と呼ばれる儲かりまっかな指標が非常に重要になってくるってわけ。

さて、前置きが長くなったがゲームの話。新品のゲームソフトは基本、メーカーの自社流通や問屋から7掛け=定価の70%前後で仕入れるのが一般的だ。ただし、業者や流通経路などの違いにより若干の変動はある。また、あるタイトルが初回生産数を超える勢いで売れすぎて全国規模での欠品及びメーカー欠品を起こした場合、その在庫を抱える問屋が卸しを8掛け9掛けとふっかけてくることも。ま、そこは商売だからね。ハード・周辺機器に関しては9掛けを大きく割ることはまずなくて、つまりソフトとハードを混合した新品ゲームの粗利率というのは10〜20%の間あたりに落ち着くということである。

さらに、昨今はダミー対策も増えてきたが窃盗によるロスが発生したとなるとさらに粗利率は低くなる。加えて、ゲームはめちゃくちゃ窃盗に狙われやすい(事後も含め、今まで数えきれないほど窃盗の場面に立ち会ったが、防犯器具をぶっ壊すくらいならまだかわいいもので、すごいのになると死角で商品を袋に詰めた後センサーゲートをラグビーばりに全速力で突っ切って、駐車場で待機する仲間の車に飛び乗ってバイバイキーン。あと、ヤバそうな常習犯を外まで追いかけて口撃してたら、バイクに乗ったまま反転したと思いきや「舐めんなコラァッ!」ってナイフ繰り出してきて追い掛け回された素敵な思い出もあるよっ)。

粗利率10〜20%、経営をある程度知ってる人からしたら「うそっ…あなたの粗利低すぎ…?」って口を押さえながらびっくらこいちゃう数字だと思うのだ。比較を出しておくと、一般的な飲食店の平均粗利率が60〜70%、美容業で50〜60%、アパレルで30〜50%、コンビニで20〜30%というから、机上計算の時点で新品ゲームだけでは経営が成り立たないということが既に見えてくる。

ちなみに同じメディア商品である新品CD・DVD・書籍はいずれも25%前後でこれらも高くはないんだが、新品ゲームとは決定的に違う点があるのだよ。それは委託販売制とか返品条件付き買い取り制度といった「返品」のシステムがあるかないか。新品CD・DVD・書籍は、条件を満たした商品であれば取次を介して問屋・メーカーに返品が可能であるのに対して、ゲームは買い切り一方通行のため、商品の返品が一切出来ない(不具合回収とかは例外)。前者は100個仕入れて99個売れ残ったとしても「伝家の宝刀だ、えいっやぁ!」ってな感じで返品が可能な場合もあるが、後者は一度仕入れたが最後、余った99個をあの手この手でお金に換えるっきゃないんである。まぁ、特価ワゴンとかセット販売とか、元旦前に紅白の袋に詰めたりするわけだね。

それと新品ゲームって初動性が極めて高い商材なので(任天堂さんのタイトルやBest版は除く)、発売初週の日曜で売れ行きに急ブレーキがかかる。仕入れた分の7割近くは初週で捌けないと緊急値下げを要することもままあって、しかし売らなきゃ市場価値は下がる一方、不要なものをなくしたいのにそんな在庫を長々と置いておくスペースなんかねぇよって店長あたりにドヤされながら、薄利・最悪赤字損切を承知で泣く泣く売っていく他ない。たま〜に発売2日目で半額になったりする哀れなソフトがあるが、あれはそういうことだ。たぶん。

さて、じゃあどうしよう?

めっさ長くなるので次回に続く。


※などと当エントリーをまとめてたら、任天堂さんが新規ビジネス商流として小売を介したダウンロード販売(パッケージと原則同額で)やるとかいうニュース。こりゃ注目。


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